平成16年度裁判所書記官研修所養成部入所試験問題(平成15年8月施行)
第1部
憲法
1問
以下の見解について論ぜよ。
「裁判所は,憲法上,法令の違憲審査権を有するが,この権限は,具体的な争訟を解決するのに必要な限度でのみ行使することができるにすぎない。したがって,裁判所が,ある紛争において,適用すべき法令の解釈によって結論を出すことができる場合には,当該法令の憲法判断をすることは差し控えなければならない。」 (50点)
2問
建物の建築規制に関する法律において,次のような条項が定められた場合の憲法の問題点を説明せよ。
条項1 近隣の住民に危険を及ぼすおそれがある増改築は許可しない。
条項2 歴史的,文化的に価値のある建物の現状を変更する増改築は許可しない。(50点)
民法
1問 Aは,息子であるBに対し,自己が所有する甲土地に抵当権を設定して,第三者から金銭を借り入れる代理権を授与し,甲土地の権利証,実印及び印鑑登録証明書を交付した。ところが,Bは,甲土地を気にいったCから,「是非とも甲土地を時価より高額で購入したい。」と言われたため,時価より高額であればAも甲土地の売却を了承するだろうと思い,Aのためにする意思をもって,Cに対し,甲土地を売却し,引き渡した。
ところで,上記売買契約締結の際,Bが売買契約書の売主欄に「A」と署名するなど自らがAであるかのように振る舞ったため,Cは,BのことをAであると誤信していた。
Aは,Cに対し,甲土地の返還を求めることができるか。(50点)
2問 民法94条2項,96条3項,545条1項ただし書に規定されている「第三者」について比較して説明せよ。(50点)
刑法
1問 甲と乙は,ある建物の屋上から,荷物を投下する作業をすることとなり,互いに通行人に注意しながら,大きい荷物は二人で力を合わせて投下し,小さい荷物は各人が投下するということで話がまとまり,その手はずどおりに作業を行った。ところが甲及び乙は,荷物を投下することに熱中し,通行人のAが気付かないまま作業を続行したため,Aに荷物を衝突させ,傷害を負わせてしまった。Aに衝突した荷物が二人で投下した大きい荷物か,各人で投下した小さい荷物かは明らかでない。
甲及び乙の刑事責任について論ぜよ。(50点)
2問 不法領得の意思について論ぜよ。(50点)
民事訴訟法
1問 Xは,Yを被告として,「XはYから甲絵画の贈与を受けたが,YはXに対して甲絵画を引き渡さない。よって,Xは,Yに対し,贈与契約に基づき甲絵画の引渡しを求める。」と主張して,甲絵画の引渡しを求める訴えを提起した。
これに対し,Yは,「YがXに対して甲絵画を贈与したことは否認する。YはXに対して甲絵画を代金100万円で売ったが,Xは代金100万円を支払わない。よって,Yは,Xが代金100万円を支払うまで,甲絵画をXに引き渡さない。」と主張した。
裁判所は,証拠調べの結果,「XはYから甲絵画を贈与されたのではなく,代金100万円で買ったものであるが,その後,甲絵画の代金支払債務の免除を受けた。」との心証を得たため,Xの請求を認容するとの判決を言い渡した。
この判決の適否について説明せよ。(50点)。→参考答案
2問 適時提出主義について説明するとともに,その実効性を確保するための民事訴訟法の規定について説明せよ。(50点)
刑事訴訟法
1問 被害者をAとする強姦致死被告事件で,検察官が,被告人による犯行であることを推認させる一事情として,被告人が被害者に対し強姦の動機を有していたことを立証しようと考え,Aが生前被告人について「あの人は私にいやらしいことばかりする。」と言っていたことを内容とするBの司法警察員に対する供述調書の取調べを請求したが,弁護人は証拠とすることに同意しない。このような場合,Aの上記供述内容を証拠として用いるにはどのような要件が必要か論ぜよ。(50点)
2問 証拠開示について論ぜよ。(50点)
第2部
憲法
1問 地方自治の本旨について説明せよ。 (50点)
2問 取材の自由について具体例を挙げて説明せよ。(50点)
民法
1問 Aは,Bに対し,自己の所有する甲土地を売却する代理権を授与した。ところが,Bは,自己の債務の返済に窮していたことから,Aから交付を受けた実印及び印鑑登録証明書があることを奇貨として,Cに対し,Aの代理人と称して,Aが所有する別の乙土地を売却し,所有権移転登記をした上,売却代金を自己の債務の弁済に充てた。
Cは,Aに対し,乙土地の所有権を主張することができるか。(50点)
2問 動機の錯誤について具体例を挙げて説明せよ。(50点)
刑法
1問 甲は,A宅の玄関先路上に停めてあったA所有の車の中をのぞき込んだところ,エンジンキーが付いたままであったことからこれを運転したくなり,Aに無断でこの車に乗り込んだ。なお,甲はAと面識はない。
次の各場合における甲の刑事責任について論ぜよ。
(1)甲は,ドライブした後元に戻しておくつもりでこの車を3時間ほど乗り回した上,Aの気付かないうちに元の場所に戻しておいた。
(2)甲は,そのまま乗り去るつもりでこの車のエンジンキを始動させたところ,その音に気付いたAが大声で「泥棒」と叫びながら家から出てきたので慌てて急発進したが,ギア操作がうまくいかず,数メートル進んだところでエンジンが止まってしまい,その場でAに取り押さえられた。(50点)
2問 構成要件の機能について論ぜよ。(50点)
CP
憲法
第1問 特定の専門的な事項に関する紛争の解決について,次のような各法律が定められた場合の憲法上の問題点を説明せよ。
法律1 スポーツ競技の勝敗に関する紛争は,「スポーツ裁判所」という行政機関が審理判断することとし,この種の紛争に関しては,一切,裁判所に訴えを申し立てることはできない。
法律2 特定の類型の商取引に関する紛争は,先に裁判所が審理判断をし,それに不服がある者は,専門的な行政機関にのみ不服を申し立てることができるが,その行政機関の審理判断に対しては,一切,不服申立てができない。
第2問 憲法の人権規定の私人間における効力について説明せよ。
民法
第1問
Aは,甲土地を所有し,登記名義も有していたところ,昭和50年10月1日,Bに対し,甲土地を賃貸し,引き渡した。Bは,同日以降,甲土地を平穏かつ公然に占有していたが,昭和55年10月1日,子供であるCに対し,甲土地はBが所有するものであると説明した上で,甲土地を贈与し,引き渡した。
Cは,Bの言葉を信じて,甲土地の所有権を取得したものと考え,それ以後も,甲土地を平穏かつ公然に占有していた。
一方,Aは,平成11年11月1日,Dに対し,甲土地を売却し,所有権移転登記をした。また,Dは,平成13年10月1日,Eに対し,甲土地を売却したが,所有権移転登記はしていない。
この場合,次の小問に答えよ(各小問は独立した問いとする)。
(1)Dは,平成11年11月15日,Cに対し,甲土地の返還を求めた。CD間の法律関係について説明せよ。
(2)Eは,平成13年10月15日,Cに対し,甲土地の返還を求めた。CE間の法律関係について説明せよ。
第2問
賃貸人が建物賃貸借契約を解除するための要件について,賃料不払を理由とする場合と,無断転貸を理由とする場合とに分けて説明せよ。
刑法
第1問
甲は,A宅から,A名義のX銀行の預金通帳,印鑑,キャッシュカード及びキャッシュカードの暗証番号を記載した紙片を盗み出した。
次の各場合の甲の刑事責任について論ぜよ(ただし,A宅への住居侵入及びA宅からの預金通帳等の窃盗の点は除く。各場合は独立したものとする。)。
(1)甲は,盗み出した印鑑を用いて,A名義の預金払戻請求書を作成した上,X銀行の窓口に,盗み出した預金通帳と共にこれを提出して,Aの預金口座から現金100万円の払い戻しを受けた。
(2)甲は,盗み出したキャッシュカードを用いて,X銀行のATM機(現金自動支払預入機)を操作して,Aの預金口座から現金100万円を引き出した。
(3)甲は,Bに債務を負っていたところ,その弁済のために,盗み出したキャッシュカードを用いて,X銀行のATM機を操作して,現金100万円をAの口座からBの口座に振替入金した。
第2問
結果的加重犯について論ぜよ。
民事訴訟法
第1問
Xは,Y及びZを共同被告として,「XはYに対して100万円を貸し付けた。また,ZはXに対してYの債務を保証した。」と主張して,Y及びZに対してそれぞれ100万円の支払を求める訴えを提起した。
Yは,郵便による送達の方法による適式な呼出しを受けながら,答弁書を提出することなく,この訴訟の口頭弁論期日に欠席したが,Zは,この訴訟の口頭弁論期日において,Xの主張する各事実を認めた上,YがXに対して100万円を弁済したと主張した。これに対し,Xは,Zの主張する弁済の事実を否認した。
審理の結果,裁判所は,「証拠によれば,YがXから100万円を借りたこと,ZがXの債務を保証したこと,YがXに対して100万円を弁済したことのいずれの事実も認められる。よって,XのY及びZに対する請求をいずれも棄却する。」との判決を言い渡した。
この判決の問題点について説明せよ。
第2問
釈明権について説明せよ。
刑事訴訟法
第1問
次の場合に,裁判所は有罪の認定ができるか
(1)窃盗被告事件において,被告人の自白はあるものの,それ以外の証拠としては,「自分としては盗まれたかどうかよく分からないが,犯人が自分で盗んだと言っているのであれば,そのとおり盗まれたものと思う。」旨の記載がある盗難被害届しかない。
(2)盗品等有償譲受け被告事件において,被告人の自白はあるものの,それ以外の証拠としては,「当該盗品を盗まれた。」旨の記載がある盗難被害届しかない。
第2問
公訴事実の同一性の機能について論ぜよ。