平成17年度裁判所書記官研修所養成部入所試験問題(平成16年8月施行)
第1部
憲法
1問 議院の自律権について論ぜよ。 (50点)
2問 営業の自由の限界について論ぜよ。(50点)
民法
1問
XはY銀行に預金口座を有し,50万円の預金をしていたところ,Xの子である甲が,Xの通帳及び同人の銀行届出印をXに無断で持ち出した上,Y銀行に赴き,Xから上記預金の全額払戻しについての代理権を与えられたと称して,Y銀行の担当者に対し,同預金の払戻しを求めた。Y銀行の担当者は,甲に対し,同預金の全額の払戻手続を行った。
この場合における,XY銀行間,X甲間及び甲Y銀行間の,それぞれの法律関係について論ぜよ(なお,銀行取引約款の存在については考慮しないこと。)。(50点)
2問
即時取得(民法192条)について説明せよ。(50点)
刑法
1問
甲は,深夜,勤務先からの帰宅途中,人通りのない路上で見知らぬ男性Aが老人Bにナイフを向けているのを目撃した。実際は,AはBに自慢のナイフを見せていたに過ぎなかったが,甲は,Bが強盗に遭っているものと思い込み,Bを助けようと考え,2人の方に近づいていった。
次の各場合における甲の刑事責任を論ぜよ。
(1)甲は,とっさにその場に落ちていた木の棒をそれと知りながら拾い,これをAの胸部に突き当て,AをBから引き離そうとしたところ,その棒の先端に鋭利な金属片が付いていたため,その金属片がAの胸に突き刺さり,Aは失血死した。甲は,行為当時,木の棒の先端に金属片が付いていることには気付いていなかった。
(2)甲は,とっさにその場に落ちていた鉄パイプをそれと知りながら拾い,これをAの頭部目掛けて力任せに打ち下ろし,その結果,Aは脳挫傷で死亡した。
(50点)
2問
親族等の間の犯罪に関する特例(刑法244条,257条)について論ぜよ。 (50点)
民事訴訟法
1問
Xは,Yに対して,売買代金500万円の支払を求めて訴えを提起した。その審理手続の中で,Yは,上記売買代金について自己に支払義務があると考えたため,Xとの関係で和解の話し合いを進め,その結果,XとYとの間で,YがXに対し,450万円を支払うことなどを内容とした訴訟上の和解が成立し,和解調書が作成された。しかし,その後,Yは,上記和解は,錯誤(民法95条本文)に基づくものであったと考えるに至った。
Yが上記和解の効力を争いたいと考えた場合,どのような方法をとることが可能かについて論ぜよ。 (50点)
2問
本案判決と訴訟判決の相違点について説明せよ。 (50点)
刑事訴訟法
1問
被告人の被害者Aに対する傷害被告事件が審理されていることを前提に,次の各場合に裁判所はどうすべきか論ぜよ(なお,各問は独立したものとする)。
(1) 検察官が,Aの傷害の部位,程度を立証するために請求してきた医師B作成の診断書につき,弁護人は,同意の意見を述べたが,被告人は,「自分としては,これを証拠としてもらいたくない。」と述べた。
(2) 検察官が,被告人のAに対する暴行状況を立証するために請求してきた被告人の検察官に対する供述調書(自白を内容とする。)につき,弁護人は,同意の意見を述べ,被告人も特に反対の意見を述べなかったので,裁判所は,これを採用して取り調べた。しかし,その後の証拠調べの結果,被告人は,取調担当検察官Cの「素直に認めれば不起訴にする。」との約束を信じて自白したことが判明した。(50点)
2問
捜査機関が被疑者の尿を強制的に採取する場合の刑訴法上の問題点について論ぜよ。(50点)
第2部
憲法
1問 国会と内閣の関係について論ぜよ。(50点)
2問 表現の自由の規制に関する違憲審査基準について説明せよ。(50点)
民法
1問
Aは,BからBが所有している中古時計(以下「本件時計」という。)を購入した。ところが,本件時計の内部には不具合があり,購入後これが原因ですぐに動かなくなった。Bは,売却当時,本件時計に不具合があり,すぐに使用できなくなることを知っていながら,それをAに告げなかった。他方,Aは,本件時計に不具合があるとは思っておらず,仮に,不具合があることを知っていれば購入することはなかった。
この場合,AのBに対する考えられる法的主張及びこれらの関係について論ぜよ。 (50点)
2問
民法177条の「第三者」に当たらない者(登記がなくても対抗できる第三者)について
例を挙げて説明せよ。(50点)
刑法
1問
甲は,友人のAがその自宅の居間に骨董の大皿を飾っているのを見てどうしても欲しくなり,これを盗もうと考え,
深夜,A宅に忍び込んで同宅の居間でこの大皿を探し始めた。
次の各場合における甲の刑事責任について論ぜよ(各場合は独立したものとする)。
(1)甲が大皿を見付けて手に取ったところで,物音に気付いたAが居間にやってきて,甲に対し,それは大切なものだから,持っていかないでくれと懇願した。そのため,甲は悪いことをしたと思い直し,大皿をその場に置いてA宅から立ち去った。
(2)甲は,結局,大皿を見付けることができなかったので,諦めて何も盗らないままA宅から逃げ出した。実は,Aにおいて,その数日前にこの大皿を骨董屋に売り払っており,甲がこの大皿を盗むことは物理的にみれば不可能であった。(50点)
2問
業務上過失致死罪(刑法211条1項)及び業務妨害罪(同法233条後段,234条)における「業務」の意義について,具体例を挙げながら説明せよ。(50点)
CP
憲法
1問
国政調査権について論ぜよ。(50点)
2問
在監者の基本的人権について論ぜよ。(50点)
民法
1問
Aは,CからC所有の土地(以下「本件土地」という。)を貸借した。
次の各場合に,AはBに対して,本件土地の明渡しを求めることができるかについて説明せよ(各小問は独立した問いとする。)。
(1) Bが本件土地を何らの権原もなく資材置き場として占有していた。
(2) Bが本件土地をCから賃借して資材置き場として占有していた。(50点)
2問
双務契約の特質について,具体例を挙げて説明せよ。(50点)
刑法
1問
甲は,所持金がなかったため,無銭飲食しようと考え,たまたま立ち寄った乙経営の居酒屋で酒食を注文し,飲食した。その後,甲は,逃走するため,「ちょっと電話をかけてくる。」と言って店の外に出たところ,不審に思った乙が追いかけてきて飲食代金の支払を求めたため,甲は,乙を殺して支払を免れようと考え,乙の腹部にナイフを突き刺して殺害した。
甲の刑事責任について論ぜよ(銃砲刀剣類所持等取締法違反の点は除く。)。(50点)
2問
被害者の承諾について論ぜよ。(50点)
民事訴訟法
1問
Xは,Yを被告として,「Yに100万円を貸し付けたが,弁済期を過ぎてもYは弁済しない。」と主張して,100万円の支払を求める訴えを提起した。
次の各場合に,裁判所はどのような判決をすべきであるかにつき,問題点を指摘しながら説明せよ(各小問は独立した問いとする。)。
(1)Yは,「100万円を借りたのはZである。」と主張した。証拠調べの結果,Xから100万円を借りたのがYであるか,Zであるか,いずれとも心証を形成できなかった。
(2)Yは,「請求原因は認める。しかし,Xから債務を免除された。」と主張した。その後X本人尋問期日において,Xは,Yからの質問に対し,「Yに対し,返済しなくてもよいと言ったことはある。しかし,気が変わったので訴えを提起した。」と述べた。このXの供述とXが提出した証拠によれば,Yの上記主張どおりの事実が認められた。(50点)
2問
訴えの取下げと請求の放棄の共通点と相違点について説明せよ。(50点)
刑事訴訟法
1問
次の各場合に,裁判所はどうすべきか論ぜよ(各小問は独立した問いとする。)。
(1) 甲は殺人罪でX地方裁判所に起訴されたが,裁判所は,被害者の同意が認められ,同意殺人罪に該当するとの心証が得られると判断した。
(2)甲は強姦致傷罪でY地方裁判所に起訴されたが,裁判所は,強姦の点は認められるものの,傷害の点は認められないと判断した。
なお,被害者の告訴はない。(50点)
2問
通常逮捕と被疑者勾留の共通点と相違点について論ぜよ。(50点)